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数学の基礎知識を社内で共有し、コミュニケーションロスを減らす / note株式会社 加藤貞顕氏×西内啓対談 Vol.2

西内啓の対談シリーズ。「note株式会社」加藤貞顕さんの第2回目です。データドリブンな取り組みができる組織を作るにはどうすればよいか、データを活用した経営で重要な、データ構造の設計についてお話が展開します。(前の記事はこちらから)

毎週社内で数学の勉強会を開催

西内 会社が成長していく過程の中で、データドリブンな取り組みをするためにどんな組織づくりをされてきたのか、教えていただけますか。

西内さん

加藤 組織づくりは本当に試行錯誤してきました。今、会社の規模が90人ほどなのですが、データに関しては専属のデータサイエンティストが1名、外部のパートナーが3名。この4名がデータ分析に携わっています。

また、データをきれいに取り出すための基盤を作るエンジニアリングチームもいますね。それとは別に、取り出したデータからレコメンデーションやマッチングの開発をする人も必要なので、マシンラーニングの担当が3名います。それとは別に、マシンラーニングをアプリケーションと結合するような技術者も必要だし、結構大掛かりにやっていますが、まだまだ人が足りません。

西内 皆さんで数学の勉強をされているとうかがいました。

加藤 以前、東大で機械学習を研究されている松尾豊先生の公開講座に参加したのですが、その際自分の数学の知識不足を痛感しました。もう1つ、データドリブンな経営をする上で、エンジニアも含めてそれにかかわるメンバーは数学や統計学が分かっていたほうがいいと思ったのです。

現在は「すうがくぶんか」という数学教室から毎週先生に来てもらって勉強会を開いています。統計学ばかりやっている時期もあれば、線形代数だったり、微積をやったり、いろいろですね。

西内 メンバーに統計学の知識があればコミュニケーションロスが少なくなりますね。

加藤 そうですね。例えば、データ基盤を作る人が「どれくらいの精度のものを作ればいいか」が分かっていれば、無理してコストをかけてトゥーマッチなものを作らなくてすみます。

西内 その勉強会にはエンジニアの方も、それ以外の方も参加されるんですか。

加藤 エンジニアやデータチームのメンバーが主ですが、希望者は参加できます。

西内 データビークルでは取引先の企業さまに弊社の製品を導入いただく時に、「データ自体を管理する人」「データを分析する人」「意思決定する人」「現場の事情が分かっているビジネスエキスパート」の4つの役割の方が揃っているかを確認しています。

noteでは加藤さん自身が「意思決定する人」として存在していますが、それに加えてデータ自体を管理する人や分析する人、ビジネスエキスパートもいて、模範のような組織だと感じますね。

加藤 このやり方でいいんですか(笑)?

西内 いいと思います。例えばcakesというサイトに関して言うと、コンテンツを作っている編集長の立場にあるような方がデータ活用について分かっていなければ、話がスムーズに進みませんよね。御社ではデータマネージャー側の方も自然発生的にデータ分析について理解している感じがします。

循環図によるグロースモデルの定義がヒットした

加藤 一般論としてよくある話で、マーケティング部門がきれいなグラフを作って配ってもまったく活用されないということが多々あります。我々はベンチャーなので、そこはきちんとやらなければ生き残ることができません。

弊社ではCXOとして深津貴之さんがきてから会社の体制が大きく進化しました。サービスも成長してきて、データの全体像を把握するのが難しくなってきていた頃に深津さんが参画して、仕組み化をしてくれたのが非常にうまくヒットしたんですよね。

彼がnoteのグロースモデルを定義してくれて、それに沿って伸ばそうという話になったのです。ここでよくありがちなのが、1つの KPI を決めて伸ばそうとする。これは、危険なやり方だと思っています。

西内  たとえば、PV を追いかけたことで質が伴わない記事だらけになるというジレンマが生じますね。

加藤 そういうことです。KPIを1つだけ見るのは間違っているのですが、だからといって全体的に見るのは難しいんです。そこで深津さんが循環図を作って、「つながりが切れていないか」「バランスよく成長しているか」をしっかり見ていこうという定義をしたわけですよ。

その後、THE GUILDの安藤さんや渡辺さん、メルカリ(当時、現在は独立)の樫田さんも加わって、さらにデータによる運営を強化しているところです。そういうメンバーと社内のデータサイエンティストがいっしょになって、矢印がちゃんとつながっているか、ここを見るためにはどの数字を見たらいいか、そうした調査を定量・定性の両方から行っています。このデータチームの調査結果をもとに、経営施策や、あるいは「投稿者の継続率を上げるためにコンテストを増やそう」といった運営をしています。

データドリブン経営で重要なデータ構造の設計

西内 もう1つ、御社では最初からきれいにデータ設計しているのが大きなメリットではないかと思いますね。紙ベースの会社では、売上のデータが PDFだったり、製品のカテゴリーがフリーテキストだったり、いざ分析しようとした時にとても扱いにくいんです。それが御社では、クリエイターごと、記事ごと、また、タグがついているものの管理をどうするか、最初からすべてをリレーショナルなモデルとして分析しやすいようデータを作っていた印象です。

加藤 noteの前にcakesというサービスをオープンしているのですが、そのときは僕自身がエンジニアといっしょに、データベースの構造から設計しましたね。僕自身もすこしプログラミングをするので、データ構造が大事だということは分かっていましたし。noteについても、主要なデータの置き場や大枠の仕組みは把握しているつもりです。

最近ではサイトの規模が大きくなってきたので、できあいの仕組みだけでデータ処理をするのにコスト面や自由度などでいろいろな不都合が増えてきたので、自前でデータ基盤を作って運用をはじめています。そこから必要に応じてデータを取り出したり、よく使うものはサマライズしたり、といったことをデータチームやエンジニアと話し合って実行しています。

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西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
加藤 貞顕(かとう さだあき)note株式会社 代表取締役CEO
1973年新潟県生まれ。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。アスキー、ダイヤモンド社に編集者として勤務。ベストセラーを多数手がける。
2011年にピースオブケイク(現:note株式会社)を設立。2012年、コンテンツ配信サイト 「cakes」をリリース。2014年、メディアプラットフォーム 「note」をリリース。

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「データサイエンスをみんなの手に。」を目標に掲げるデータビークルのオウンドメディア。「シティズンデータサイエンス」とは、統計学の専門家ではない一般の人々が、ツールを活用して手軽にデータを活用すること。豊富な実践事例や読み物で、データ分析の世界をより身近なものにします。

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