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データ活用で採用を「見える化」するソフトバンクの人事部門 <源田泰之さん vol.1>

データビークルの西内啓がデータ活用で成果をあげている組織のキーパーソンとデータサイエンスの現実について語り合う対談シリーズ。「ソフトバンク」人事総務統括 人事本部 副本部長の源田泰之さんに、データを活用した人事戦略についてお話をうかがいました。第1回目は、「データを活用して採用を見える化する取り組み」について迫ります。

営業職から「ソフトバンクアカデミア」での人材育成の業務へ

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西内 源田さんのこれまでのキャリアをうかがいたいと思います。最初に入社されたのはソフトバンクだったのでしょうか。

源田 私が入社したのはソフトバンクに買収される前のJフォンでした。当時は個人の連絡方法がポケットベルからPHSに変わって、そこから携帯電話に移り変わるタイミングだったんですね。PHSは日本独自の規格だったのですが、携帯電話は国際規格です。一度普及してしまえば安泰なのではないかという妙な安定志向(苦笑)と、携帯電話という身近でかつ最新のテクノロジーに興味がありました。

そこで私は営業職として働いていましたが、非常に自分の性に合っている仕事でしたね。

いまソフトバンクの人事として学生と面談をしていて困るのが、「なぜソフトバンクを選ばれたんですか?」と質問されたときなんです。私はソフトバンクじゃない会社に就職してるので、ソフトバンクを選んだ理由を聞かれても「買収されたから」と言うしかないんですよ(笑)。

西内 営業職をされていたということですが、それは販売店向けの営業だったのでしょうか。それとも法人営業だったのですか?

源田 当時は販売店向けの営業と法人向けの営業がわかれていませんでした。両方を担当していましたが、メインはコンシューマ向けでしたね。

その後、Jフォンがソフトバンクに買収されたタイミングで営業マンや店頭の販売スタッフを大幅に増員することになりました。そうなると、社内で営業マンを育成する必要があるという意見が出て、そこで、ソフトバンクでは全国から営業マンを集めて人材育成部隊を作ることになったんです。私はその人材育成部隊に配属されました。

営業は自分の動きや実績が数字として表れるのでとてもおもしろく、本当に好きな仕事でした。異動はしたくなかったのですが、営業推進の仕事もそれはそれでおもしろいことがわかってきて…。

それから流れ流され、営業マンの人材育成ができるなら全社の人材育成もできるだろうと、孫さんの後継者育成を目的に創設された「ソフトバンクアカデミア」に携わることになりました。

「おもしろい」と思うことを続けていたら次のきっかけにつながった

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西内 「ソフトバンクアカデミア」の初期メンバーには、現在株式会社UsideUのCEOをされている中澤剛さんがいらっしゃったと聞いています。シチズンデータサイエンスの対談第1回目に登場したRIZAPの鎌谷賢之さんも当時のメンバーだとうかがいました。

源田 はい。そうしたメンバーでアカデミアの立ち上げを行い、その後人事本部で正式にアカデミアを引き継ぎました。

アカデミアのユニークなところは、外部生にも参加いただいてるところです。外部生を募集するにあたって、世の中にはどんな起業家がいるのかを知りたくて、半年で100社ほど訪問したんですよ。

ソフトバンク社内には新規事業を提案する「ソフトバンクイノベンチャー」という制度があるのですが、これを起業家育成としてもっと機能させるにはどうしたら良いかという話が出ていて、起業家とコネクションがある人物として、私がイノベンチャーに参画することになったのです。

同時期に、アカデミアで出会った学生起業家から高校生起業家を紹介され、その高校生起業家とご飯を食べに行ったんです。すると、そこで数学オリンピックの金メダリストやプログラミングコンテストの優勝者を紹介され、これはおもしろいと思って彼らを孫さんに紹介したんですね。すると孫さんから、「こういう素晴らしい若者がいるのに、ちゃんとサポートする体制がないのはよくない」と言われ、その後に提案したのが「孫正義育英財団」でした。

こんなふうに、自分でやりたいことや叶えたいキャリアがあったわけではなく、単におもしろいと思うことをやってみたら次のきっかけにつながるという感じでしたね。

西内 自分も源田さんと同じですね。いろいろな方から「子どもの頃どう過ごしていましたか?」と聞かれて振り返ってみると「子どもの頃はセミ取るぐらいしかしてなかったな…」という答えに行き着きます(笑)。

採用は勘や経験が役に立たない

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西内 ここまで、源田さんのキャリアをお話いただきましたが、ここからはソフトバンクの人事本部がどのようにデータ活用をしているかうかがいたいと思います。御社ではAIを使うなど、データ活用を進めているそうですが、具体的にどんな取り組みをしているのでしょうか。

源田 人事周りでは、採用が一番データを活用していると思います。なぜなら、採用は勘や経験が役に立たないんですね。採用に必要な能力はたくさんありますが、大切なのは次の3つです。

1つ目は、対人力。人事担当者が学生や採用候補者に会ったとき、「この人と働きたい」と思ってもらえるのは大きな要素だと思います。

2つ目が、データ活用の能力です。弊社の採用の仕事はいま、ほぼデータに基づいて意思決定しています。学生に向けてどんなプロモーションを仕掛けるかといったこともデータをベースとして施策を決めているので、人間が判断する部分はどんどん減ってきています。

3つ目は、クリエイティビティですね。

西内 2つ目のデータ活用について詳しく教えてください。

源田 例えば弊社では入社後にどんなタイプの人が、どんなふうに活躍していくのかといった、採用時の属性と採用後の活躍の相関性をみています。SPI や面接の評価と、入社してからの活躍がどれくらいリンクしているのかというものです。

また、採用選考のどの過程が入社に一番影響するのかにも注目しています。どういうルートを通れば入社につながるのか、フォロー担当者や面接官との相性、採用プロセス採用などの要素を分析しています。

当たり前の話ではあるのですが、選考期間が短ければ短いほど離脱率が減って入社率は上がります。そこで申込みから内定受諾するまでにそれまで2ヶ月半かかっていたプロセスを、どうやったら2ヶ月以内に縮められるかといったところをデータに基づいて調整しています。

どのサイトから流入してきた学生が内定受託につながる率が高いかもデータ化しています。どこのサイトにどんな出稿をするべきか、どのルートから入ってきた人が採用につながるのかが可視化されるので、それをもとにアタックリストを作ったりしています。

結果、大手就活サイトへの出稿を大幅に減らしました。データ分析をすることで、「ソフトバンクに入社してから活躍する人の属性を持った母集団に直接アプローチするほうが効率的」だと気づいたためです。

西内 しっかりデータ見ていくと、そういう「むだ」を感じとる感覚が芽生えてきますよね。

源田 そうですね。ただその当時は、あまりデータ化がされていなかったんですよ。担当者に聞いてみても、そもそも3万の母集団がどこから来ているのか、きちんと把握すべきデータがあまりありませんでした。そこで、その時点で取れるデータはすべて見える化しました。そういう意味では、すべてを見える化する転機になりましたね。

そうして、浮いたお金を、システム化や人的な労力につぎ込むように変えたのです。そのタイミングで採用管理、選考管理のシステムも見直しました。

西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
源田 泰之(げんだ やすゆき)ソフトバンク 人事総務統括 人事本部 副本部長 兼 採用・人材開発統括部 統括部長 兼 グループ人事統括室 室長 兼 未来人材推進室 室長

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