「リーダーに学ぶ姿勢がなければ、道具を使いこなす文化は育たない」グッデイ 柳瀬隆志氏×西内啓対談 Vol.3

西内啓の対談シリーズ。株式会社グッデイ 柳瀬隆志さんの第3弾です。社内にデータ分析活用を文化として根づかせるには何が重要なのか?。データ分析を生真面目に終わらせないための「ハック」する姿勢などについて語り合います。

リーダーが自ら学ばなければ、便利なツールを使いこなす文化は育たない

柳瀬 私は、自分が社長という立場なので、会社の業績や数字を上げるためにデータ活用することを大きなテーマとしています。また、関連会社である「カホエンタープライズ」ではデータ分析の環境構築を支援していますので、現場をどう巻き込むかということにも興味があります。西内さんの本を読んだのもそうなのですが、やはり勉強し続けなくてはだめだと思いました。

西内 弊社でも統計学講座を開講していて、企業の方から評価いただいています。

柳瀬 そうですよね。みなさん大学を卒業すると勉強をやめてしまいますが、統計やクラウドの分野は半年ほどのサイクルで新しいものがどんどん出てきます。常に新しい知識を仕入れておかなければ、分からなくなってしまいますよね。社内にそうしたことを勉強する習慣や雰囲気を作っていきたいと考えています。

西内 それは実現できそうですか。

柳瀬 そうですね。カホエンタープライズの営業で他社さんの状況をヒヤリングしてみると、大きな会社でも、意外と今できることを知らないのだなということに気づきます。まだまだ改善の余地がありますね。クラウドだからといって、とてつもなく面倒なこと、難しいことをしているわけでなはく、むしろ簡単になっているのですから、どんどん使えるようになったほうがいいと思うんですよね。

西内 柳瀬さんのおっしゃるとおりで、リーダーがそういう姿勢でいなければ、便利なツールを導入しても、なかなかその先まで普及していくのは難しいのですよね。そこは文化の醸成という話になってきます。

柳瀬 講演を依頼されてお話をする機会があるのですが、社外の方にとっては、私たちが当然だと思っていることがおもしろいんだと気づきました。こちらからすると、GsuiteやTableauなどのツールを使って仕事をするのは当たり前のことなのですが、それが商売になったりするんだなと思います。

課題を解決することが、儲けや業績につながる

西内 そうした教育分野にも力を入れていかれるというお話ですが、御社の今後のデータ活用のビジョンをお聞かせいただけますか。

柳瀬 今後については2つのビジョンを持っています。1つ目が社内的な話で、グッデイというホームセンター事業についてです。今、若手社員がデータを分析し、活用できるようになってきていまして、社内的な文化の醸成は進んできました。ここからは、取引先を巻き込んだ動きができると、業績にも直接影響が出てくると考えています。

2つ目は社外的な話として、私たちの事例をもとに、データ分析活用を啓蒙活動的に展開していきたいと思っています。データを単純にビジュアライズするときもデザインにこだわるなど、みんなが新しい可能性を感じられる取り組みにしていきたいですね。こうした取り組みが結果的に会社の生産性や仕事のやり方を変えることにつながるので、実現させたいと思っています。

西内 弊社のツールを使っていただいているお客さまの中には、新しいことにチャレンジしやすくなったという反応があります。それまで、経験に基づいて提案をするしかなかったのですが、データ分析を用いることによって試行錯誤のサイクルが早くなったのだそうです。また、自分たちがやってきたことの成果を可視化することで、日々の作業がどのようなかたちで会社の収益に貢献しているかという点に気づくことができるという声もありました。

柳瀬 日々なんとなく過ごしていることでも、統計的・数字的な裏付けがあると、迷いがなくなりますね。例えば、フェミニンな洋服を売っている人は、なんらかの要素が好みに影響しているのではないかという話があったときに、男兄弟の中で育った女性と、姉妹の中で育った女性とで好みが違うなど、なんとなく仮説が立てられるのですよね。

それを回帰分析してみたら、実はこういう傾向がありましたと言えるのですが、その手法を知っているかどうかで、飲み会のネタで終わるのか、仕事のネタにつながるのかが変わってくると思うのです。どのようにデータを使って現実を理解するのかということですね。

西内 データを使って現実を理解したうえで、そこをうまくコントロールすれば儲かるのではないかというところまでつなげたいですね。

柳瀬 そうですよね。

西内 自分は「ハックする」という表現をよく使っているんですが、ゲームとかでも何が効率的なのかということがわかっていると、普通であればしないような方法を使ってレベルを早く上げたりすることができるじゃないですか。データ分析もそうで、ある種ずるをするみたいな狡猾さが必要なのではないかと思うんです。すごくまじめに分析するだけではなかなか先に進まないんですよね。

たとえばアパレルであれば、ある色のある商品を購入してもらうと、そのあとのライフタイムバリューが一気に上がるというものが見つかったりするんですよね。それを一回購入してもらうと、着回しのパターンが劇的に増えて、自店のお客さんとして長く来店していただけるんだろうな…というような商品です。これらは「まじめな分析」の枠からは外れたものですが、非常に重要な知見なのではないかと思います。

柳瀬 現場の人はそうしたことを感覚的につかんでいたりしますよね。小売業のように現場があるところはデータ活用がやりやすいです。

社長という立場になってあらためて思うのは、課題を解決することが儲けや業績につながるということです。地域の会合にも参加するのですが、課題が分かっていながら、その課題を解決しないまま、ただ情報の共有をして終わってしまうのですね。もしもITで1つ問題解決できれば、全部スケールすることができるのでやりやすくなります。

世の中には非常にたくさんの優れた人がいると思うので、汎用的に使えるそうした仕組みが実現されていくといいですよね。クラウドやデータ分析ツールがなければ、私はずっと気づかずにいたと思うので、この後にも続く人が増えて欲しいと思っています。

西内 確かにそうですね。本日は非常に興味深いお話をありがとうございました。

西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
柳瀬隆志(やなせたかし) 株式会社グッデイ代表取締役社長
株式会社カホエンタープライズ代表取締役社長。1976年福岡生まれ。2000年東京大学経済学部卒業後、三井物産株式会社に入社。2008年嘉穂無線株式会社へ入社、2013年、嘉穂無線株式会社代表取締役副社長を経て、2016年に株式会社グッデイ(嘉穂無線株式会社より社名変更)の代表取締役社長に就任。現在に至る。

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シティズンデータサイエンスラボ

「データサイエンスをみんなの手に。」を目標に掲げるデータビークルのオウンドメディア。「シティズンデータサイエンス」とは、統計学の専門家ではない一般の人々が、ツールを活用して手軽にデータを活用すること。豊富な実践事例や読み物で、データ分析の世界をより身近なものにします。

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