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「数字で物ごとを判断しようというDNAがトライアルにはある」トライアルカンパニー 西川晋二氏×西内啓対談 Vol.1

データビークルの西内啓がデータ活用で成果をあげている組織のキーパーソンとデータサイエンスの現実について語り合う対談シリーズ。今回は九州エリアを中心に「スーパーセンター」を展開する小売業トライアルカンパニーグループCIOの西川晋二さんです。ダブレットカートや電子棚札などを用い、スマートストア化を推進する、同社のデータ活用についてお話を聞きました。
シティズンデータサイエンスラボは「データサイエンスを全ての人に」を掲げる株式会社データビークル(https://www.dtvcl.com/)が運営する公式noteです。

十数年分のID POSデータを自前のITシステムで活用

西内 まずはご存知ない読者の方向けに、御社がどのようなビジネスをなさっているのか教えてください。

西川 『トライアル』は、生活全般にわたる商品をワンストップで買い物できる幅広い品揃えの店舗を展開しています。われわれはこの業態を「スーパーセンター」と呼んでいて、アメリカのウォルマートのビジネスモデルを真似たものです。ウォルマートはITと物流を自前で構築していますのが、我々もこれにならってITを自前で構築しています。

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IT技術は、従来は効率化のために活用されることが多かったのですが、昨今ではデータベースや統合基幹業務システムのような「モード1」 と、企業と潜在顧客をつなぐ「モード2」に分かれてきていると言われています。

後者ではいかにデータを活用するかが肝になりますが、小売業では自社で持つPOSデータにポイントカードなどを組み合わせることで「ID-POS」データを獲得することができます。

※ID-POS:買物客のID(個人識別番号)付きのPOSデータ。ポイントカードの普及によって、ポイントカードを利用する際に収集できる個人の購買履歴データ。

弊社では早くからポイントカードを発行していまして(1996 年に自社開発PC-POSを完成)、十数年分のID-POSデータが積み上がっているんです。これを活用しようとしたときに、まずは自社でデータを集計してレポートにしてきました。

西内 まずはデータの可視化から着手されたというわけですね。

西川 はい。弊社では16年前から中国に開発拠点を置いているのですが、そこにはシステム開発だけでなく、業務処理をつかさどるチームがあり、帳票を作るグループがいるんです。そこが担当してデータの可視化を進めていました。

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ところが、ある時期、データサイエンス専門の会社が中国の拠点へ視察に来た際に、「集計やデータをビジュアル化して表にしただけではデータサイエンスとは言えない。データを使って予測か最適化のどちらかを実現するところまで踏み込まなければならない」という、非常に強い示唆を残してくださったんです。そこから刺激を受けて、弊社は少しずつデータサイエンスに取り組んできました。

さらに3年前に弊社の創業会長の永田久男が「第4次産業革では、全ての産業においてAI の活用が避けられなくなる。小売業も例外ではない」と言いまして、それからデータサイエンスとAI活用を重ねるかたちで、いろいろなチャレンジをしています。

「流通を科学する」数字で物ごとを判断しようというDNAがトライアルにはある

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西内 トライアルさんの社内で、西川さんがデータ分析におけるリーダーシップを取るようになった背景には、どのようなきっかけがあったのですか?

西川 私は以前Panasonicに勤めていまして、コンピューター向けストレージのマーケティングを担当していました。在職していた14年間の半分はアメリカのシリコンバレーに出向していたのですが、現地でコンピューターの変遷を見ていて、そこでコンピューターに関する興味が湧いたのです。それからアメリカの大学でコンピューターの基礎的な勉強をしたあと、独立してベンチャー企業を立ち上げました。

永田会長に誘われてトライアルグループに入社したのは、6年ほど運営していたそのベンチャー企業が買収されたことがきっかけでした。米国での経験やベンチャー企業を立ち上げた経歴をいかして、現在はトライアルグループの中でシステム事業を立ち上げたり、オペレーションの仕組みづくりをリードする役割を担っています。

西内 小売業界の中でも、特に御社は先進的な取り組みをなさっていますが、それを実行できる文化の土壌はどういったところにあるのでしょうか?

西川 私どもの創業会長が「流通を科学する」ということを言っていまして、数字で物ごとを判断しようというDNAが社内にあるのだと思います。

西内 素晴らしいですね。

西川 弊社にはいわゆるExcelの達人みたいな人たちが相当な数いるんです。もちろんユーザーコンピューティングが盛り上がるのはいいことなのですが、それぞれの場所で働いているExcelが重要なオペレーションをつかさどっしまうと、何かあった時に統合性が取れないなど逆効果になることもあります。

データの活用でもそうしたことが起こりますので、私たちは分析に活用できるデータウェアハウスや分析基盤を、基幹システムと並行してつくってきました。

<続く>

西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
西川 晋二(にしかわ しんじ)トライアルホールディングス 取締役副会長 グループCIO/ティー・アール・イー 代表取締役社長
1982年、松下電器貿易(現Panasonic)入社。1987年、米Panasonic出向を経て、1993年にPanasonicディスクシステム事業部、帰任。1996年、トレーサーテクノロジージャパン設立、代表取締役就任。2002年にトライアルカンパニー入社。ティー・アール・イー代表取締役、トライアルカンパニーグループCIOなどを歴任。2016年7月より現職