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コンピューターサイエンスを学んだ若者が能力を発揮できる場をつくる

西内啓の対談シリーズ。データビークル株式会社CEO油野達也の第3回目です。コンピューターサイエンスを学んできた若者がスキルを発揮できる場を提供したいと油野。そのような考えに至る背景について語りました。

プロダクトが日本のSIのビジネス構造を変える

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西内 油野さんはSIとプロダクトベンダー両方で営業をされてきました。そこから、受託開発ではなくてプロダクトを売っていくことが大事だと感じたそうですが、なぜでしょうか。

油野 1つには、優れたパッケージソフトがもっと使われるようになることでSI業界もよりよくなるだろうということです。日本のSIのビジネス構造には、多重下請けや偽装請負が当たり前にあって、エンジニアの負担が大きいんですね。プロダクトがあればその工程は減り、本来あるべき企業全体のシステムアーキテクチャーにより注力できるようになるはずです。

もう1つ、プロダクトが浸透していくことで、日本のIT業界のビジネスモデル全体が変わるのではないかと考えています。アメリカや中国では、調達の仕方がプロダクト中心なんですね。日本もいつかそうなるだろうと思っています。

その上で世の中の役に立ちたいと考えています。西内さんはいつもおもしろおかしく「自分は小学校から大学までずっと税金というこの国のお金で勉強してきた上に、就職してからも(東大の先生として)お国から給料をもらっていた。だからそれを世の中にお返ししようと思うんですよ」といいますよね。そう言いながら、西内さんは「本気で世の中の役に立ちたいんだ」という気持ちを持っていることを、私はいつも感じています。

世の中の役に立つためには、西内さんのノウハウを普通の人が安全に、簡単に使えるようにするということです。それを実現するのが私の仕事だと思っています。西内さんのノウハウを取り入れたパッケージと私のやりたいことはセットになっていてうまくかみ合っているんです。

コンピューターサイエンスを学んだ若者が能力を発揮する場を提供したい

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西内 コンピューターサイエンスを勉強してきた若者たちがデスマーチに巻き込まれるのは好ましくありません。優良なプロダクトを作れるような会社が日本にももっとたくさん生まれて、彼らのスキルを活かしてほしいと言っていましたね。

油野 そうですね。コンピューターサイエンスを学んでも、就職先に悩む学生さんが多いのが現状です。それでたとえばブラック企業に就職してしまって過酷なデスマーチを繰り広げることになるかもしれません。コンピューターサイエンスを学んだ方たちが自由にのびのびと仕事をさせてもらえるような場があるといいと思っています。

NECや日立、東芝、富士通といった大手が自社でプロダクトを作っていた時代は、国内でもコンピューターサイエンスを学んでいた人たちが活躍できる場がありました。ところが、今ではOSは海外製のものになり、コンピューターサイエンスを学んだ人たちが活躍できる場が減ってしまっています。

アニメ「攻殻機動隊」の第一話で、出国しようとしたコンピュータエンジニアが空港で抑止されるシーンがあるんです。「あなたは海外に行ってはいけない能力者です」と止められてしまう。

西内 「能力者」は輸出できないと言われるわけですね。

油野 そう。まさにコンピュータエンジニアは能力者なんですよね。海外に行くのではなく、日本で活躍して欲しい。繰り返しになりますがコンピュータサイエンスを勉強した若者が日本でちゃんとスキルを発揮できるような…トキワ荘のような…トキワ荘だとちょっと貧乏な感じがしますかね(苦笑)…そういう環境を我々が提供したいと思っています。

西内 ジャズの話で、『マイルス大学』という表現があるのを思い出しました。マイルス・デイヴィスのチームに入ってきた若手がどんどん成長して、一人でリードアルバムが出せるようになるという意味です。それに似ているかもしれません。

油野 そうですね。私はデータビークルを、プログラミングが好きな若者たちがのびのびとスキルを発揮して活躍できるような会社にしたいんですよ。

こうした考えの根底には、SI 時代に亡くなった同僚の存在があります。彼の葬儀に出席したとき、お父さんが亡くなってしまったことがわからず走り回る小さな子供たちを見て、この状況を何とかしなければと感じました。もっとのびのびと仕事ができる世界があっていいのではないかと思うんですね。

私は、西内さんが「ミケランジェロ」で、私自身は「メディチ家」だと思っています。画商として、西内さんが描いた絵、根津さん(データビークルのテックリード)が描いた絵を適正な価格で販売する。メディチ家は若い画家たちに住居と絵の具と食事を提供するんです。100人のエンジニアのうち4,5人が成長すれば、あとの95人も食べていける。そういう会社になれればいいなと思っています。

西内 最後に、組織を大きくしていくにあたってどんな人材を求めているか教えてください。

油野 新しいことをおもしろいと思える人ですね。新しい道は必ずでこぼこだし、舗装はされていませんが、誰も見たことのない景色を見たいという気持ちを持ってくれる人がいいなと思います。見たことのない景色をみんなで一緒に見に行こう!と思ってくれる人がいいですね。会社は思いを同じにするみんなの「乗り物」という考えで「データビークル」という社名にしたんです。

西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。

油野達也(ゆのたつや) データビークル代表取締役社長
1964年生まれ。大学卒業後、独立系大手SI企業に入社し、営業職に従事。1993年、関西NTTデータ通信システムズ(現NTTデータ関西)に転職、2001年から親会社であるNTTデータの営業部長に抜擢される。2005年よりソフトウェアの開発・販売事業を展開するインフォテリアで営業責任者を務める。2014年12月、データビークル設立と同時に現職に就任。
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「データサイエンスをみんなの手に。」を目標に掲げるデータビークルのオウンドメディア。「シティズンデータサイエンス」とは、統計学の専門家ではない一般の人々が、ツールを活用して手軽にデータを活用すること。豊富な実践事例や読み物で、データ分析の世界をより身近なものにします。