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みんなによく手を洗ってもらうためにはどうすればいいのか?行動科学とデータ分析から考えてみた(第1回)

世界中で感染拡大が続く新型コロナウィルス。感染を予防するには「せっけんでの手洗いが効果的」と連日メディアで報道されていますが、いまだに手を洗わない人がいるのも事実です。そうした人に手を洗ってもらうにはどうしたらいいのでしょうか。行動科学とデータ分析から解決策を探ります。
シティズンデータサイエンスラボは「データサイエンスを全ての人に」を掲げる株式会社データビークル(https://www.dtvcl.com/)が運営する公式noteです。

新型コロナウィルスの感染予防には手洗いが効果的

新型コロナウィルスでたいへんな時期ですが皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

きっと不慣れなテレワークや外出自粛でストレスを抱えている皆さんも多いのではないでしょうか。ワクチンも特効薬もまだないこのウィルスに対して私たちにできることは限られていて、「とにかく外出しないこと」「外出するとしても人との距離を少なくとも1m(2mと言う専門家もいます)保つこと」そして「せっけんでよく手を洗うこと」などが公的機関によって推奨されています。

なぜ手を洗うことが予防になると考えられるのでしょうか?

それはせっけんがその性質上コロナウィルスを物理的に破壊できるからです。コロナウィルスは脂でできた膜に包まれていますが、せっけんは「油と水の両方になじむ」という性質によって、汚れをキレイに水に流してくれます。そしてせっけんと水に囲まれたコロナウィルスの膜は、その状態を維持できずに崩れて割れてしまうのです。

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いざ体の中に入ってしまえばウィルスを殺すような特効薬はいまのところありませんが、私たちの体の外にあるうちであれば、ウィルスは「殺す」ことが可能なわけです。

逆に言えば仮にいくら高性能なマスクをしていても、例えばウィルスの付着したドアノブを触ってしまい、その後手を洗わずに、何かを手でつまみ食いしてしまう、というだけで感染のリスクはあります。

データビークルではもともとテレワークやフレックス勤務を許可していましたので、公共交通機関を利用することも少なく、通勤が必要な事業者と比較すると感染リスクを低く抑えられている状態だったといえます。それでも、2月頃から「とにかく手だけは医療専門職と同じ正しい手順でよく手を洗うこと」と社内に呼びかけていました。

ちなみに、先日『3月のライオン』や『ハチミツとクローバー』で有名な漫画家の羽海野チカ先生も次のようなポスターを「営利目的の利用でなければご使用いただいて構いません」と公開されましたがこれは素晴らしい社会貢献ですね。

どうしたら全ての人が「手を洗う」のか 行動科学で考える

とはいえ、このような社会情勢において、これだけ「手を洗いましょう」というメッセージがメディアから流れていても、まだ手を洗わない人はいるそうです。

「手を洗う」なんていうちょっとした手間が感染拡大防止に繋がるのであれば、全ての人がやった方がいいと私たちは思うのですが、「手洗いをする人を増やす」ためにはどうすればよいでしょうか?

ここで応用できそうなのが行動科学の考え方です。

実はデータビークルの代表の1人である西内啓は統計学だけでなく行動科学も専門にしており、私たちもよくその知見を仕事に活かすことがあります。

行動科学とは、人間の行動を科学的に研究し、その法則性を解明しようとする学問のことです。心理学、社会学、人類学、精神医学などがこれに含まれます。

たとえば、ビジネスにおいては、顧客の行動を変えるための活動を「マーケティング」と呼び、従業員の行動を変えるための活動を「マネジメント」と呼びます。

ある特定の行動を何が促進し、何が阻害するのかを科学的に考え、適切にデータをとって分析すれば、「マーケティング」でも「マネジメント」でも解決策を見つけることができるかもしれません。

もちろん「手を洗う」という行動をする人をどれだけ増やすことができるかも、行動科学の手法で検討してみることが可能です。

それでは次回、「どうしたらもっと手を洗う人を増やせるか」を考えるための行動科学の理論を紹介したいと思います。


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