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みんなによく手を洗ってもらうためにはどうすればいいのか?行動科学とデータ分析から考えてみた(第3回)

手洗いにはどのような意識が関係しているのかを定量的なデータとして得られれば、統計学的に分析することが可能になるはずです。そこで我々は実際に手洗い意識に対する調査を実施。511名もの皆さまのご協力をいただくことができました。では実際の分析結果を見てみましょう。

「よく手を洗う人」と「洗わない人」の違いは何か

今回の目標行動となる「あなたは日頃からマメに手を洗うようにしていますか?」という質問への回答は、以下の画像のような結果になりました。

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さすがに常日頃「手を洗え、手を洗え」と言っている西内のフォロワーさんが中心だけあって、回答者のうち8割近い方が既にマメに手を洗われているようです。

もちろんこうしたデータだけでも「回答者のうちよく手を洗う人と洗わない人の違いは何か」を分析することは可能なのですが、今回の分析結果を解釈する上で「回答者」の集団が日本人全体よりは少し健康的だったり(日ごろからtwitterを使いこなし西内のややこしいツイートをおもしろがるほどには)リテラシーが高い側に偏っている可能性には注意をしておいた方がいいかもしれません。

また、後日「医療関係者以外にも飲食業界など手洗いを徹底する専門職の方はたくさんいるのでは?」と完全に西内が失念していた点をtwitter上でご指摘頂いた旨もここで共有しておきたいと思います。

つまり、もともと知りたかった「一般的なよく手を洗う個人の特徴」だけではなく「飲食などよく手を洗う職業の方の特徴」が混ざり込んでしまっている可能性も考えて結果を読み解かなければいけません。

手洗いについての意識調査の結果をdataDiverで分析

この大量に考え出された質問項目から「統計学的にただの誤差や偶然と言えないレベルでどれが行動と関係していると言えるか」「さらにそのうち最も関係の強そうなものは何か」を分析するのはふつうに考えるとたいへんな作業なのですが、幸いなことに私たちデータビークルは「dataDiver」という便利な分析ツールを社内で自由に使うことができます。

分析操作は以下の画像のようなイメージで、4つのプルダウンメニューを選ぶだけです。(画像はクリックで拡大できます)

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実際にやってみると、十数秒ほどで次のような結果が得られました。

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ネガティブ、つまり「手を洗わない人に多い」という回答は赤色で、逆に手を洗う人に多いポジティブな回答は青色のテキストで示されています。またそれぞれの結果はマメに手を洗うかどうかという行動に対して統計学的に関係性が強そうな順番に並んでいます。

もっとも関係が強そうなのは「一人で部屋にこもって作業している時でも手を洗いますか?」という質問で、これにどう答えるかでマメによく手を洗うかが大きく分かれるようです。

ちなみにこちらの「詳細」というボタンを押すと分析結果の断面図を見ることができます。

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さきほど「全体の8割近い回答者が既に手を洗っている」と説明しましたが、「1人で部屋にこもっている時なら洗わない」という人に限定すれば40%ほどの方しかマメに手を洗わないようです。逆に、1人でこもっていても手を洗う、という方だとなんとそのうち90%以上の方が普段からマメに手を洗っているようです。

これ以外にも統計的にただの誤差や偶然ではないと判断される(こうした回答は画面上で「クリア」とか「とてもクリア」と表示されます)項目を見ていきましょう。

2番目に関連の強そうな項目は「もし自分はよくても相手が嫌だと思ったら手を洗うか」で、これに「いいえ」と答えている方がよく手を洗っています。つまり「人から言われてどうこう」という規範よりは、「私がやるべきだと思ったからやるんだ」といった意識に訴求する方がスジの良いメッセージなのかもしれません。

3番目として「目に見えるような手の汚れがなければ手を洗わない」という人はマメに手を洗っていないという結果が得られました。

また4番目として「手洗いはエチケットとして重要ではない」と考えている人はやはり手をマメに洗わない傾向にあることもわかります。

以上4点は統計的に「ただの誤差や偶然ではない」と、慣例的に学術誌でも判断されるような水準の関係性を示していましたが、それ以降の「こまめに手を洗うことが自分の体調を良好に保つ上で必要不可欠だと思いますか?」からは、その水準に満たないために「曖昧」と表示されています。

これはつまり、もしこのまま無制限にデータを取得した際、「こまめに手を洗うことが自分の体調を良好に保つ上で必要不可欠だと思いますか?」とという質問に対して、「はい」と答えている人も「いいえ」と答えている人どちらも、同じぐらいの割合でマメに手を洗う人がいるという状況であったとしても、500人ほどの調査では多少偏りが出るということです。その程度の偏りである可能性が否定しきれないために、この結果は「曖昧」と判定されたといえます。

ちなみに、性別や年代についても考慮する可能性があるかもしれないと考えて、念のため調査項目には含めておきましたが、これらは特に関係ない(少なくとも偶然と考えられる範囲の差しかない)という結果でした。

データの分析結果をいかに施策につなげるか

以上をまとめましょう。調査結果から、ただの誤差や偶然とは考えにくいレベルで「マメに手を洗う」という行動と関係しうると示唆された意識は4つ見つかりました。これらは訴求ポイントとして少なくともそれ以外よりも「スジが良さそう」だと考えられます。よって、

1)自宅で1人でいる時でも手を洗おうと思ってもらう
2)「人がどう思うか」というような規範意識への訴求は避ける
3)目に見える汚れがなくても手を洗おうと思ってもらう
4)手洗いはエチケットとして重要だと思ってもらう

ということを上手く達成できれば、世の中にもう少しマメに手を洗う人が増えてくれるのかもしれません。

これら自体たいへん興味深い結果ですが、私たちデータビークルの社員は「へぇ~興味深いね~」と分析結果を眺めてもらうために働いているわけではありません。私たちは分析結果から打ち手を考えて、そこから何かしらビジネスや社会を少しでもよくしてもらうために存在しています。

そこで、次回はこの連載の締めくくりとして、得られた分析結果からどのように施策を考えるのかのお話をしたいと思います。


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