見出し画像

数学を学ぶことは社会の仕組みを理解すること/【特別対談】堀口智之氏(和から)×西内啓 Vol.2

「数学・統計学を学びなおす」がテーマの特別企画、後編です。大人のための数学教室を運営する和から代表の堀口智之さんと西内啓の対談は、授業のクオリティコントロールや、数式をいじることによって得られる感動に話が及びます。
シティズンデータサイエンスラボは「データサイエンスを全ての人に」を掲げる株式会社データビークル(https://www.dtvcl.com/)が運営する公式noteです。

大人の数学は何をどう学んでもいい

西内 御社で講師になられる方はどのような人が多いんですか?

堀口 いろいろなタイプの方がいますが、共通しているのは数学を愛しているということです。

画像1

堀口 大人向けの数学教室を運営してみて、受験に受かりたいから数学を勉強する学生たちとは違って、大人は自分が学びたいから数学を勉強するということを知りました。

だから大人向けの数学教室では、その人が学ぶ目的を達成することができるのであれば、どういう風に教えてもいいんですよね。特に趣味で数学を学ぶ人は、宇宙の話のように数学の一歩先に踏み込んだお話をすると、こういうことを学生時代に教わりたかったと喜んでくださいます。

画像2

だから、講師の側も、大人に向けて数学の授業をすると「こんなに楽しいと思わなかった」という感想を抱くことが多いんです。お客さまが目の前で喜んでくださると何が起こるかというと、お客さまのニーズにさらに合うように、講師が授業をカスタマイズしはじめます。このように、お客さまが知りたいことを講師も学んで、お客さまと一緒に成長させていただいています。

西内流プレゼンの秘訣は地道な練習にあり

西内 授業のクオリティコントロールはどのようにされているのでしょうか?

画像3

堀口 初めて授業に入る前に模擬授業をしたり、定期的に指導の講習会などをしていますが、一番重要なのは採用のときの面接だと考えています。

数学の知識がある人、教えられる人はたくさんいるのですが、お客さまのために数学を教えられるかどうかというのはまた別の話で、そういうことができる人を採用時の面接で見極めています。

それと、コーディネーターがお客さまのニーズをヒヤリングして、定期的な面談の場で講師に「お客さまはこういうことを学びたいみたいだよ」というふうにフィードバックをしたりもしています。

西内 そうやってブラッシュアップしていくのは素晴らしいですね。

私は世の中の仕事には大きく2つあると考えています。1つは、書類作成のように自分のペースでできる仕事で、もう1つは、音楽やスポーツのように、その場の一発勝負で決まる仕事です。授業は後者であって、スポーツや音楽、演劇では練習を欠かさないのに、なぜ授業は練習しないのだろうとずっと疑問に思っていました。

自分もプレゼンがうまいとお褒めいただくことが多いんですが、明確に練習量の問題があると思っていまして。

大学院生のときに、当時の先生から家庭用ビデオカメラの前でプレゼンの練習をするようにすすめられました。その録画を見てみると、大学院生時代の西内っていう不審人物が映ってるわけですよ(苦笑)。

画像4

西内 文章のつながりがおかしかったり、不自然に手が動いてたり、目が泳いでたり。何度も動画に撮って直すということを繰り返してるうちに、自分の今のプレゼンのスタイルができあがりました。

弊社が和からさんと一緒に開催している統計学教室では、もう一段階上のクオリティコントロールの取り組みをしています。

まず私が模範演技をしているところを撮影し、それを参考に講師の方に模擬授業をしていただいて、その様子を同じように動画で撮影します。それを見ながらフィードバックをして、講師が流暢に話せるようになった状態で受講していただくようにしています。

計算をエクセルに任せれば数学アレルギーでもとっつきやすい

西内 数学でも手を動かす練習というのはとても大切なのですが、ビジネスマンの方は数式を書かせると嫌がることが多いですね。ですので、我々の統計教室では数式ではなく、エクセルの作業に落とし込むということをしています。エクセルはみなさん触ったことがあるので、アレルギーが少ないです。

堀口 そうですね。数式をいじることで分かる感動もあるんですが、「そもそも二乗ってどういうこと?」「因数分解ってなんだっけ?」という話になって、階段をだいぶ昇らないといけなくなります。

まずは「数字をいじってみる」という思考が重要だと思っているので、エクセルでもなんでも使って「まずは適当に数字を入れてみてください」というところからなじませていくことが大切です。

西内 最後に、社会人が統計学や数学を勉強する一番の意義はどのようなところだと思いますか?

堀口 普通に生きてると、社会の仕組みというのは、表面的な部分しかわからないと思うんです。「理由はなぜかわからないけど、こんな結論が出た。なぜそうなったのかはわからない」ということが多いと思うんです。

ですが、数学や統計学を学ぶことで、社会の仕組みや、人間が物事を考える上での根本的な原理みたいなものを、感情的にではなく、論理的に理解することができるようになる、というのは大きな意義の1つだと思っています。

西内 本日は興味深いお話を、ありがとうございました。

画像5