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誰が何に向いているかの定義は、時代によって変化する<源田泰之さん vol.3>

西内啓の対談シリーズ。「ソフトバンク」源田泰之さんの第3回目です。ソフトバンクでは一次面接に動画面接を取り入れ、AIで合否を自動判定しています。良い人材を確保するためにはリードタイムの短縮が必須だからです。そして、今後は優秀な学生に選ばれる会社になることが健全な競争であると源田さんは話します。(前の記事はこちらから
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人の判定と同等の精度をAIで実現

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西内 今後、新型コロナによって対面でのビジネスが難しくなってくると、非言語による情報量が落ちてきます。そうなると、データを活用して見極める精度を上げられるかどうかが会社としての競争力に影響しそうですね。

源田 おっしゃるとおりです。データ分析がちゃんとできる人が1日1時間ぐらいやるだけでも全然違ってきますよね。

現在、弊社の採用の応募者の方には一次面接で動画を提出してもらっています。動画はエクサウィザーズの動画解析モデルを使い、合格基準を満たすものをAIで自動判定しています。合格と判定されたものは次の選考に進み、不合格と判定されたものについては人事担当者が人の目で動画を確認し、もう一度合否判定を行いますが、人の判定と同程度の精度をAIで実現できています。

これによって合格の精度が92、93%まで上がりました。不合格となった人の中には「実は合格だった」という人はそれなりにいるのですが、合格の母集団には「実は不合格だった」という人は稀です。

良い人材を採用するにはリードタイムの短縮がカギになる

西内 合格の人は速やかに合格にして、リードタイムをいかに短くするかということですね。

源田 そうです。今進めているのは大きく次の2つです。1つ目は、動画を活用しようということ。対人での面接で、人の目ではこれまでわからなかったことを、いかに動画を使って見つけられるかということです。2つ目が、まさにリードタイムをどう短くするかですね。リードタイムと入社には強い関連性があります。

西内 その会社を受けるということは入社したいからであって、早い段階で「合格」と言われたら入社しますもんね。合否結果を待たされてしまうから別の会社もいいかなというふうに考えが変わってしまうこともあるでしょう。

源田 新型コロナの影響で会社訪問もできないし、それ以上に志望する会社の将来はどうなのか、採用が取りやめになったりしないか、学生は不安になっています。また、コロナ禍でほとんどの会社が採用計画を変えている状況です。そんな中、リードタイムをどれだけ短くするかが重要になっています。

優秀な学生に選ばれる会社になることが健全な競争を促す

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西内 今後も社会情勢の変化や技術革新が予想されています。源田さんの中ではこの先のビジョンをどのようにお考えですか?

源田 企業側がテクノロジーを使って学生たちにアプローチすることは大切です。一方で、自分が何をしたいかわからないという学生に対して、「こんな仕事やこんな働き方があって、こんな人と一緒に仕事すると、生産性やモチベーションが上がる」「自分の成長につながる」といったことを提示できるといいですよね。

学生目線ではそういうものがあるとよいと思いますし、優秀な学生に選ばれる会社になるということが健全な競争だと思っています。

西内 その人の向き不向きについては最近、意外と難しいなと気づいたことがあります。ある相談で、スポーツの向き不向きをAIで判定することはできないかと言われたことがあるんですね。確かに理論上は可能です。しかし、1つだけ難しいのが、スポーツのプレイはパラダイムの変化が激しいのです。

サッカーでいうと、今成功しているサッカー選手に似たタイプの選手をピックアップすることはできるんですね。例えば仮に90年代のデータから「成功するサッカー選手を見つけよう」とした場合、中村俊輔選手のように狙ったところにボールを飛ばせる器用さがあって、かつ視野が広いという選手は見つけられるかもしれません。

しかし近年のサッカーではフィジカルの重要性が大きく上がっていて、そこで活躍している身長190 cmで足が速いといった選手は当時のデータからアメフトやバスケを勧められていたはずなんですね。

それはビジネスでも気をつけなければいけないことです。先ほど源田さんもおっしゃっていたように、以前は人事では対人コミュニケーション能力の高い人材が必要とされていました。それが、データ分析できる人材が必要だと気づいたものの、そういう人はみんな情報システム部門にいる。そうした昔ながらのモデルを更新せずにまわしていくと、そこを崩すのが怖くなってきますよね。

誰が何に向いているかは、時代によって変化するということを常に意識しないといけないと思います。

源田 なるほど。昔とは型が少し違いますもんね。昔は体力と勢いと突撃力でした。

西内 営業も少しずつ変わってきている最中だと思います。セールスフォースのようなツールが出てくると、「わしの勢いで社長口説いたる!」というタイプの人よりも、いかに効率的に営業するかということを考えられる人のほうが営業部長として力を増しているのではないでしょうか。

チームの中で、そうした異質な強さのバリエーションを揃えておかなければいけなくなってきているのは難しいところだなと感じています。

現状は採用の人材ポートフォリオを面接官で担保している

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源田 採用のポートフォリオという話では、どういうタイプの人をどれくらい採用すればそれが最適かと言われると、正直わからないんですよね。今はそうした部分を面接官で担保しているところがあります。

例えば、もともと営業で実績を出していた人が面接官をしたところ、「この応募者は営業に向いている」というので採用したら、実際に入社後の活躍度が想定の倍以上だったということがありました。

西内 それは、営業向けの人材は営業部の人に面接させたほうがいいのかもしれないということでしょうか。

源田 はい。その部署で活躍している人が「この応募者はこの部署にむいている」といって採用した人は活躍度が高いのだとすると、それこそポートフォリオになりうるのではないかと思っています。

社内のさまざまな部署で活躍する人に最終面接官を担当してもらうと、結果的にうまくいくのではないかと仮定して、現在試行錯誤しているところです。

西内 本日は、貴重なお話をありがとうございました。

西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
源田 泰之(げんだ やすゆき)ソフトバンク 人事総務統括 人事本部 副本部長 兼 採用・人材開発統括部 統括部長 兼 グループ人事統括室 室長 兼 未来人材推進室 室長

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