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「AIカメラでファクトベースでのマーケティングを実現」サツドラホールディングス富山浩樹氏×西内啓対談 Vol.3

西内啓の対談シリーズ。「サツドラホールディングス」富山浩樹さんの第3回目です。AI開発も手がける同社。AIによる動線分析で、これまで「だろう」でおこなわれていたマーケティングがファクトベースに変わりつつあるといいます。
シティズンデータサイエンスラボは「データサイエンスを全ての人に」を掲げる株式会社データビークル(https://www.dtvcl.com/)が運営する公式noteです。

AIの導入で意思決定がファクトベースに

西内 御社ではAI開発も手がけていらっしゃいますが、どういったところにフォーカスを当てているのでしょうか。

富山 弊社が業務提携契約をしているAWL株式会社では、店舗のカメラ画像認識ソリューションを開発しています。このソリューションでは、店舗に来店されるお客様の性別や年齢などの属性と、店内での人の動線を分析します。従業員とお客さまがどういう動きをしているのか、すべて見えるようになっています。これで何をするかというと、店舗の Web 化です。

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ECの場合は、あるページをどれくらいの時間見ていたか、どこでページを離脱したか、どのような動線で購入に至ったかなどが可視化されていますが、リアル店舗では基本的に調査員がお客様のあとを追うというようなアナログな調査が行われていました。

しかし、AI の画像認識のレベルが上がったことによって、お客様が本当に売場に立ち寄ったのか、そもそもこの通路を通ったのか、購入したかどうかなどがWebのように可視化できるようになったのです。

これまでは、声が大きかったり経験が豊富な人のひと声で売れた・売れなかったの理由を判断していましたが、AIによってファクトベースの意思決定ができるようになったことは大きいですね。

今までできなかった購買行動が一気通貫でデータ化できる

西内 動線分析は個人に紐づけるところに皆さん苦労されますが、そこはどうですか。

富山 これからだと思います。現在20社ほどのメーカーさんとマーケティング研究会を立ち上げて、カメラとID-POSと売場とを見て分析をしています。そこに必要なBIの要素を入れ込んでどんどん回していますね。

これまで小売業はメーカーさんなどの仕入先にPOSデータも開示しないで「切った貼った」の商談をしていました。小売業側にしか情報がないままでバイヤーがメーカーと丁々発止をしていたのですが、そのうちにPOSを開示して、メーカーさんと共同でデータを見るようになりました。現在弊社はID-POSデータを開示していますが、今後はここにカメラからの情報も組み込んで小売とメーカーで一緒にマーケティングを研究していくようになると思っています。

私たちはOMO(Online Merges Offlineの略。オンラインとオフラインの融合を指す)の研究会を開催していますが、これにもメーカーさんが十数社参加しています。たとえばYouTubeでサツドラ発信のコンテンツを作って、店頭と連動したキャンペーンを打ちます。それど、どれぐらいの方が動画を視聴して、どれぐらい購入に至ったのか、コンバージョンを追っているんです。その施策が今とても効いています。

そこに加えてAIカメラを使って店内の動線まで可視化すれば、今までできなかった一人のお客様の購買行動を一気通貫でデータ化するということが可能になります。次に確立したい世界はそこです。

西内 ドラッグストアではメーカーさんや卸さんに棚割を丸投げしている印象ですが、御社ではいかがでしょうか。

富山 メーカーさんに協力いただいているところはありますね。

西内 そうすると、動線分析の結果を見て、メーカーさんから「ここの棚をくださいよ」と交渉されるケースも出てくるわけですよね。今まで優位だとと思われていた陳列位置よりも、それまであまり重視されていなかった位置がが熱かったということも出てきそうですね。

富山 それはありえますね。

現在マーケティング研究会で、あるメーカーさんと、あるカテゴリーを伸ばそうという取り組みをしているのですが、そもそもその商品が陳列してある通路にお客様が入ったかどうかが分かりませんでした。そこで、お客様を通路に呼び込むため、店頭や主通路沿いの何か所かにアイキャッチを掲示したんです。

これまでは、目立つ場所やお客を引き込める場所は経験で判断していたのですが、今回のテストではカメラを連動させたので、アイキャッチを置いた場合と置かなかった場合で反応がどう違うのかということを仮説検証して分析することができました。これまでリアル店舗でできなかったABテストを実現できたんです。

西内 今後は店頭メディアとしてサイネージを置いて、リアルタイムで表示を切り替えるといったことも考えていらっしゃるのでしょうか。

富山 そうですね。今後サイネージにも力を入れていくと思いますが、サイネージはあくまで手段だと思っています。大切なのは「効果があったかどうかをしっかり分析できるようになる」ことですね。

西内 今後、御社ではどのようにデータ活用をされていかれる予定ですか。

富山 可視化できるデータは確実に増えていますが、それが意味のあるデータなのかどうかが分かるのはこれからだと思っています。活用段階にはまだ遠く、使いやすさや打ち手、どのような仮説を立てるかが重要なので、そこで活用されるデータをしっかり作っていきたいですね。また、データに携わる人のリテラシーをどう上げていくのかも重要だと思います。

西内 本日は貴重なお話をありがとうございました。


西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
富山 浩樹(とみやまひろき) サツドラホールディングス代表取締役社長兼サッポロドラッグストアー代表取締役社長
1976年北海道札幌生まれ。札幌の大学を卒業後、日用品卸商社に入社。2007年にサッポロドラッグストアーに転じて2015年に社長就任。2016年サツドラホールディングスを設立し現職。

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