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「顧客データは大きな資産だという価値に気づき立ち上げた『エゾカ』」サツドラホールディングス富山浩樹氏×西内啓対談 Vol.1

データビークルの西内啓がデータ活用で成果をあげている組織のキーパーソンとデータサイエンスの現実について語り合う対談シリーズ。今回はデータに基づくドラッグストア経営や共通ポイントカード『エゾカ』を提供する「サツドラホールディングス株式会社」代表取締役社長の富山浩樹さんにお話をうかがいました。第1回目は、「データの価値と活用方法」について迫ります。

顧客データの価値に気づき共通ポイントカードを着想

西内 まずは読者の方に御社の事業の全体像をご紹介ください。

富山 弊社は北海道を中心に約200店舗を展開するドラッグストア「サツドラ」と、5年ほど前に設立した「リージョナルマーケティング」という地域マーケティングの会社を経営しています。

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リージョナルマーケティングでは、『エゾカ』という地域の共通ポイントカードを立ち上げまして、現在北海道の世帯カバー率が約65%、会員数が約190万人にまで伸びています。この2つの事業がアセットとなっていまして、どちらもデータを持っています。

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西内 『エゾカ』事業に踏み出されたのはどのようなきっかけだったのでしょうか。

富山 『エゾカ』事業をスタートしたのは5年ほど前になります。その1年ほど前から全国で共通ポイントカードが急速に伸びていました。当時、北海道には共通ポイントカードの加盟店が少なかったので、弊社もTカードやPONTAカードなどから熱烈に加盟するよう誘われたんです。

一時は契約直前まで進んだのですが、彼らのプレゼン資料を読んでいて、我々が持っている顧客の価値というのはすごいものだと改めて考えさせられました。

ドラッグストアにはパーソナルケアであるヘルス&ビューティーから、ホームグッズ、食品まで生活全般のデータがあって、週に1、2回同じお客さまが来店されます。よく考えたら、これは顧客データという意味では非常に大きな資産だなということを感じたのです。

このデータを、こちらがお金を支払って他社に渡すのはどうなんだろうと思ったことと、流通・小売業界ではデータを活用したマーケティングが乏しいということを感じておりまして、そこから『エゾカ』の着想をしていきました。

当時、地域の価値やサツドラとしての差別化戦略を考えたときに、データ活用ができていなかったり、マーケティングリテラシーが上がっていない地域で顧客を持っている企業さんがたくさんありました。ここを深掘りしている企業がほかになかったので、それならば自分たちがプラットフォーム側になろうと考えたんですね。

データマーケティングで顧客とのタッチポイントを作る

西内 データ活用という言葉が出ましたが、具体的に御社のポイントカード事業で得たデータを使ってどのようなメリットがありましたか?

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富山 我々のポイントカード事業には2つの軸があります。まずサツドラとしては通常の小売業と同じように『エゾカ』をポイントカードとして使い、そのデータをマーケティングに活かそうとしています。

また、『エゾカ』に加盟しているドラッグストア以外の企業から得られたデータをサツドラのお客さまのデータと組み合わせて分析したり、ドラッグストア以外のお客さまにもアプローチすることもできます。このように『エゾカ』を活用することで、お客さまとの接点を増やし、自社のサービスに流入してもらうための打ち手が増えたというのは大きいですね。

西内 データから、全国チェーンとは違う北海道のお客さま独自の購買行動が見えてきたりはしますか?

富山 全国チェーンのデータとはあまり比べたことはないのですが、都市部の企業と違って、サツドラは食品の割合が全体の4割で、日用品も多く取り扱っています。そういう意味では、パーソナルケアの割合が非常に強い都内のドラッグストアとは違った中身になっているのではないかと思いますね。

西内 メーカー側から売り方の提案をされることはあるんでしょうか?

富山 私たちは逆にそこをアピールポイントにしていまして、メーカーさんのテストマーケティングの場として弊社を使っていただきたいと思っているんです。北海道でマーケティングプロモーションをしたいのであれば、サツドラグループの資産を使っていたければどこよりもお客さまにリーチします。

北海道のマーケットシェアは全国の5%ほどしかありません。そうすると、いかに道外のメーカーさんなどから北海道に投資してもらうかというのが大きな視点になります。北海道だけのマーケットだと矮小化してしまいますが、北海道でテストしたことを全国に展開していただくということができれば考え方も変わってくるはずです。

スポーツと地域マーケティングは親和性が高い

西内 ポイントカードを通して、加盟店など他者とのつながりでコラボレーションを企画するなどの動きはありますか。

富山 ありますね。私たちが重要視しているのは、「エゾクラブ」です。ポイントカード『エゾカ』はツールとしてお得で便利な機能である一方、「エゾクラブ」では“つながる”“楽しい”をベネフィットとしてと考え、企業間やお客さまとのつながり、コミュニティ化というところを重要視する戦略を描いています。

エゾカの地域マーケティングを広げようと考えた時に、エンゲージメントの高さで選んだのが、「子育て中のママさん」と「スポーツ」でした。弊社では「エゾクラブコミュニティ」というコミュニティを230ほど運営していまして、そのうち6〜7割はママさんコミュニティです。子育て世代の方は悩みが多いので、人とつながりたいと考えている人が多いんですね。そこで、リージョナルマーケティングのコミュニティマネージャーがイベント支援をしたり、「エゾクラブマガジン」や「エゾママ」という Webサイトを運営しています。そのようにしてエゾカの加盟店との接点を増やしているのが1つですね。

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もう1つ、コラボレーションで分かりやすい事例がコンサドーレ札幌の応援企画です。加盟店でカードを使って買い物や飲食をすると、利用金額の0.5%がチームに還元されるので、顧客は間接的にチームの応援に貢献することができます。

コンサドーレ札幌にはオフィシャルファンクラブもありますが、実はファンクラブ会員よりコンサドーレエゾカ会員数のほうが多いんですよ。ですが、エゾカの会員にはいわゆる「にわかファン」も多いので、いかにそういった方たちに試合を観戦していただくかが重要です。

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現在はコンサドーレエゾカで取得したデータを活かして、クラブチームの試合を観戦しに来たか、その後加盟店に飲食をしに行ったのか、コンサドーレの試合に来ていない人はどういう動きをしているかまで把握することができています。エンゲージメントとデータを組み合わせたマーケティングがうまくいっていると思います。

地域とスポーツの結びつきは非常に強いので、バスケットボールBリーグのレバンガ北海道や、旭川市にあるヴォレアス北海道というバレーボールチームでも同じようなスキームを展開しています。スポーツと地域マーケティングはとても親和性が高いと思っていますね。

西内 都市部と地方とでは少し状況が異なりますが、いずれでもきちんとコミュニティを作っていかなければいけないという話はJリーグでも議題に上がっています。札幌はそういったポテンシャルが高そうです。

弊社のツールを採用いただいている川崎フロンターレさんは6枚チケットを買っている人が意外と多いという分析結果が出ています。また、食べ物とセットのチケットを買っている人は1年間の使用金額が高いといった結果も出ています。コンサドーレ札幌でも、チケットを何枚購入する人のロイヤリティが一番高いか?といったような分析が機能する可能性もあるかもしれません。

西内啓(にしうちひろむ) 株式会社データビークル 最高製品責任者
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。自身のノウハウを活かした拡張アナリティクスツール「dataDiver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
富山 浩樹(とみやまひろき) サツドラホールディングス代表取締役社長兼サッポロドラッグストアー代表取締役社長
1976年北海道札幌生まれ。札幌の大学を卒業後、日用品卸商社に入社。2007年にサッポロドラッグストアーに転じて2015年に社長就任。2016年サツドラホールディングスを設立し現職。

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